経営と現場をつなぐ「組織人事アドバイザリー」
から始まった変革の10年
~「評価BPaaS」による成長戦略~
株式会社オーダースーツSADA
代表取締役社長 佐田展隆 様
事業内容
紳士・婦人オーダースーツの製造・卸・販売
導入事例概要
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1.導入課題成長の陰にあった“組織の断絶”
2.導入効果“人事を仕組み化する”フェーズへの転換
3.サイレコの評価経営の成長を支える「持たざる人事」
4.導入課題コロナ禍が問い直した「人をどう支えるか」
5.導入効果評価BPaaSによる「制度の運用力」の進化
6.サイレコの評価「人的資本経営」への進化
7.今後の展望「人事を内製化しない勇気」が競争力になる
導入したサービスの特徴
評価BPaaS(人事評価運用のシステム化+BPO)
●評価のスピードと公平性の向上
●マネージャー層のマネジメント力向上
●現場社員の納得感の高い評価プロセスの実現
●全社の目標整合性(経営⇔部門⇔個人)の明確化
本記事では、株式会社オーダースーツSADA(以下、SADA社)の代表取締役社長・佐田展隆様に、株式会社アクティブ アンド カンパニー(以下、AAC)の代表取締役社長・大野順也がお話を伺いました。SADA社のこれまでの歩みや業績拡大の裏側をひも解きながら、経営変革に踏み切った背景、その取り組みのプロセス、そして成果へとつながった要因について伺いました。
成長の陰にあった“組織の断絶”
“「オーダースーツを、もっと身近に」。
全国に45拠点を展開するSADA社は、いまや国内最大級のオーダースーツチェーンとして知られている。だが、その成長の裏には、2010年代前半に直面した大きな組織課題があった。当時の同社は、売上約20億円・26拠点の規模。急速な店舗展開に対し、組織運営や人事制度の整備が追いつかず、経営の意図が現場に伝わらないという「断絶」が生じていた。
SADA社・佐田展隆社長(以下、佐田社長)
「社員の想いは強いのに、方向がバラバラだった。経営が伝えたいことが現場に届かず、評価も曖昧で、がんばる人が報われない状態になっていました。」
そんな時期に伴走を始めたのが弊社だ。2014年から「組織人事アドバイザー」として参画。月1回の定例ミーティングを通じて、経営課題の抽出から人事制度・評価・労務管理・採用まで、広範囲の人事課題に取り組んだ。
AAC・大野順也(以下、大野)
「当時のオーダースーツSADAさんは、トップが明確なビジョンを持っていた一方で、マネジメント層がその意図をどう咀嚼し、現場に落とすかという“翻訳機能”が弱かった。まずは経営と現場をつなぐ『人事』を再定義するところから始めました。」
“人事を仕組み化する”フェーズへの転換
“このアドバイザリー活動を通じて、SADA社の組織運営は少しずつ変わっていった。
まずは「採用」「評価」「勤怠管理」などの実務課題を一つずつ整理し、制度と運用の両輪を回す体制を確立。だが、店舗数が増えるにつれ、現場マネージャーが適切に評価や育成を行う仕組みが求められるようになった。
そこで2019年に弊社のクラウド型人事管理システム「サイレコ」を導入した。
これが転機となった。
クラウド型人事管理システム「サイレコ」の導入は、単なるシステム導入ではなく、「評価制度を運用する仕組み」を外部化・標準化する評価BPaaS(Business Process as a Service)の第一歩だった。
BPaaSとは、SaaS型のシステムと人事の専門家による運用支援を融合させたサービスモデルであり、弊社が業界に先駆けて展開している。この仕組みにより、SADA社では以下のような変化が生まれた。
- ・アナログ打刻やExcel評価の撤廃:勤怠・評価をクラウド上で統合管理
- ・マネージャー育成の加速:評価者研修・目標設定研修を通じ、現場のマネジメント精度が向上
- ・評価のスピードと公平性の向上:システム上で評価進捗を可視化し、拠点間のバラつきを解消
特に「評価の標準化と定着」は、アドバイザリーとシステムの二重支援によって進んだ。システム運用にとどまらず、弊社が“第二人事部”として評価面談や昇格審査にも関与することで、経営理念に基づいた評価文化が根付き始めた。
経営の成長を支える「持たざる人事」
“こうした取り組みの積み重ねにより、SADA社は2020年代に入っても安定した成長を遂げている。売上は約43億円、拠点数45店舗へ拡大。従業員規模も200名を超えた。一方で注目すべきは、これほどの規模にも関わらず「大規模な人事部門を持たない」という点だ。
評価・勤怠・給与計算までをBPaaSモデルで外部化することで、管理部門をスリムに保ちながらも、制度運用の精度を高めている。
佐田社長
「社内にすべての機能を抱え込むよりも、プロに任せることで安定運用できる。自分たちはお客様に向き合い、組織はそのために最適化する。そういう“持たざる経営”が今の時代に合っていると思います。」
大野
「オーダースーツSADAさんのように、経営が『人事を外部パートナーとともに育てていく』という発想を持てたことが大きい。BPaaSは単なる効率化の仕組みではなく、“変化に強い組織”をつくるプラットフォームです。」
コロナ禍が問い直した「人をどう支えるか」
“2020年、コロナ禍により多くの小売・サービス業が打撃を受ける中、SADA社も例外ではなかった。店舗営業が制限され、売上が大幅に減少。現場は「モノを売れない」状況の中で、従業員のモチベーション維持と組織の一体感をどう保つかという難題に直面した。
佐田社長
「お客様と直接会えない状況の中で、社員の心が離れていく感覚がありました。そんな中で、人事制度を“評価のための仕組み”ではなく、“つながりをつくる仕組み”として見直す必要があると感じました。」
評価BPaaSによる「制度の運用力」の進化
“SADA社が導入したBPaaSモデルは、単なる人事システムの置き換えではない。弊社が掲げるBPaaSとは、「BPO(業務委託)」と「SaaS(システム)」を組み合わせた運用そのものの外部化である。従来の“システムを使うだけの支援”ではなく、評価の企画・設計・進行・分析・調整を、弊社が「第二人事部」として伴走する点に特徴がある。
たとえば、SADA社では評価者研修・目標設定研修・1on1研修などを定期的に実施。研修内容は、評価エラー防止、目標の定量化、ロジックツリーによる事業目標の分解など、多様な内容に及ぶ。さらに評価期間ごとに面談支援や昇降給シミュレーションまで弊社がサポートすることで、制度の形骸化を防ぎ、評価結果が昇給・昇格・賞与に的確に反映される体制が整った。
結果として、
- ・マネージャー層のマネジメント力向上
- ・現場社員の納得感の高い評価プロセス
- ・全社の目標整合性(経営⇔部門⇔個人)の明確化
が実現した。
大野
「オーダースーツSADAさんの取り組みは、評価制度を単なる『査定のためのツール』ではなく、『組織を強くする文化』に昇華させた好例です。制度は“設計すること”よりも、“運用し続けること”の方が難しい。BPaaSはその『運用力』を外部から補完する仕組みです。」
「人的資本経営」への進化
“2023年以降、SADA社では評価と給与計算を含む一部バックオフィス機能をアウトソーシング化。これにより、現場の管理負荷を軽減すると同時に、人的資本データの可視化を推進した。サイレコに集約された評価・勤怠・処遇データをもとに、拠点ごとの人材配置や昇格スピードを分析。経営判断に活かす人的資本経営の基盤が整備されたのである。
佐田社長
「BPaaSの体制になることで、人事データを経営の意思決定に使えるようになったのは大きな進化です。感覚ではなく、データで“人”を見られるようになった。今では、採用も評価も配置もすべてが一本の線でつながっています。」
大野
「人的資本経営とは、“社員の成長をKPIで語る”ことではありません。社員が自分の仕事に誇りを持ち、成果を可視化できる環境をつくること。オーダースーツSADAさんは、それを仕組みとして定着させた企業です。」
「人事を内製化しない勇気」が競争力になる
“SADA社の組織運営は、まさに“持たざる経営”を体現している。人事の専門知識を社内で抱えるのではなく、必要な機能を外部パートナーと連携しながら柔軟に組み替える。このスタイルが、変化の激しい時代において、むしろスピードと持続性を生み出している。
佐田社長
「私たちにとっての人事とは、“人の才能を最大化するためのインフラ”です。その整備を、信頼できる外部の力と共に行うことで、社員が安心してチャレンジできる組織をつくることができる。その点において、AACのコンサルタントの皆さんは、まるで自分たちの会社のことのように、弊社の課題に真摯向き合い、徹底した伴走支援を行ってくれました。時には耳の痛い厳しい指摘もありましたが、それこそが本気で私たちの未来を考えてくれている証だと感じ、この約10年間、心から信頼して取り組みを進めることができました。これからもBPaaSの進化と共に、組織の未来を描いていきたいです。」