人的資本経営
どう実践する?

注目される背景、人的資本経営を実践するための
ポイントや開示の手順をわかりやすく解説

現在注目されている“人的資本経営”。人的リソースの活用目的をどのように捉え、どのように経営に活かしていけばよいのでしょうか?
人的資本経営が注目される背景、人的資本経営を実践するためのポイントについて解説していきます。

人的資本経営への理解

人的資本経営とは?

人的資本経営の用語定義

人的資本経営(Human Capital Management)とは、人材を「資本」として捉え、全ての人的資本を活かし、持続的に価値を向上させる人材戦略を通じて、 中長期的に企業価値向上を図る経営の在り方。人材を資本とみなし、投資の対象と考える概念です。
ここにある「人的資本」(Human Capital)とは、人材が持つ知識や経験、スキル、イノベーションへの意欲・戦略などを指します。

人的資本経営が引き起こす変化

人的資本経営情報の経営と開示の流れが、人材と人材情報の2つの大きな価値変化を生み、企業の取り組みが推進されます。

人的資本経営が注目される背景

人的資本が広まった背景として、社会変化、経済変化、戦術変化と3つ背景があります。

社会変化

コロナ渦の影響で従来の株主資本主義から顧客・従業員・地域社会・株主など全てのステークホルダーにとって利益を生み出す形を重視、ESG投資や持続可能な社会づくりに向けて注力する国・企業が増加している。

経済変化

企業価値を判断する際に、財務資産から非財務資産へ移行、投資判断において、非財務資産。見えざる資産の評価が重要視されるようになる。

戦略変化

コロナ渦の影響で従来の株主資本主義から顧客・従業員・地域社会・株主など全てのステークホルダーにとって利益を生み出す形を重視、ESG投資や持続可能な社会づくりに向けて注力する国・企業が増加している技術革新のスピードが高まることで、よりDX化と業務効率化をより上げる必要がある外部投資を行っても間に合わない、遅れを取る。情報開示の前提として最大限有効に利用することが肝要になります。

世界から日本へ、人的資本の取り組み

「非財務情報」や、人的資本を「無形固定資産」とする関心の高まり、非財務的な要素を企業経営に活用、成長のエンジンに据える方向性の強まりがあります。

概念の提起

国際統合フレームワーク<IR>(2014年)国際統合報告評議会(IIRC)が公表している国際統合フレームワークでは、資本は財務資本、製造資本、知的資本、人的資本、社会・関係資本、 自然資本という6つに分類されています。これらのうち、財務資本を除いた5つの資本が非財務資本と言われています。

指針化

コーポレートガバナンス・コード改訂 (2018年)ESGに関する対話が進む中、企業のESG要素に関する『情報開示』についてコードに盛り込むべき」との意見が複数寄せられたことを受け、 2018年3月30日公表の制度要綱で示したコード改訂案に加えて、コードの第3章「考え方」において、「非財務情報」にいわゆるESG要素に 関する情報が含まれることを明確化することとします。

取り組み姿勢の表明

コーポレートガバナンス・コード改訂 (2018年)「Statement on the Purpose of a Corporation (2019年)(企業の目的に関する声明)」
-株主至上主義からの決別 ビジネスラウンドテーブル(Business Roundtable、BRT)

企業は顧客への価値の提供、従業員の能力開発への取り組み、サプライヤーとの公平で倫理的な関係の構築、地域社会への貢献、そして最後に株 主に対する長期的利益の提供を行うことを明示した。

日本の取り組み化 

「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書」_経済産業省(2020年) 経済産業省は、持続的な企業価値の向上に向けて、経営戦略と連動した人材戦略をどう実践するかという点について、
2020年9月 「人材版伊藤レポート」を公表
2022年05月「人材版伊藤レポート2.0」を公表 (「実践事例集」を追加)

「持続的な企業価値向上=成長戦略の実現」に向けて、考え方のフレームを提起し、規則化し、企業価値向上につなげようとする動きがさらに加速しています。

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人材版伊藤レポートからみる人的資本経営

人材版伊藤レポートとは、企業価値向上のため、経産省主導で進める「持続的な企業価値向上と人的資本に関する研究会」最終報告書の通称。

人材版伊藤レポートあるべき姿の考え方と課題設定の起点

  • 企業の競争力の源泉は「人材」、「材」は「財」であるという認識の下、「持続的な企業価値向上」を実現するために、「経営戦略」と「人材戦略」が連動していることが不可欠、経営陣と経営戦略や人材戦略について対話する投資家の役割も重要となる。
  • 企業戦略の展開・持続的な企業価値向上のための経営戦略、人材戦略の「ギャップの適合」が必要。

人材戦略変革の方向性

企業・個人を取り巻く環境が大きな変化を迎え、企業は様々な経営上の課題は、人材面での課題と表裏一体であり、スピーディーな対応が不可欠です。このため、各社がそれぞれ企業理念や存在意義まで立ち戻り、持続的な企業価値の向上に向け、人材戦略を変革させることが必要になります。

人材戦略に関する経営陣、取締役会、投資家が果たすべき役割

企業・個人を取り巻く環境が大きな変化を迎え、企業は様々な経営上の課題は、人材面での課題と表裏一体であり、スピーディーな対応が不可欠です。このため、各社がそれぞれ企業理念や存在意義まで立ち戻り、持続的な企業価値の向上に向け、人材戦略を変革させることが必要になります。

人材戦略に関する経営陣、取締役会、投資家が果たすべき役割

経営陣が主導して策定・実行する人材戦略について、経営戦略やビジネスモデルに応じて3つの視点(Perspectives)、人材戦略について5つの共通要素(Common Factors)は、3P・5Fモデルとして整理できる。

人的資本経営への実践

人的資本経営を進めていくためには

人的資本経営をどのようにして進めるのかを考えると3つの手段があります。

経営戦略との連携

  • 経営目的実現に向けた戦略に対して、紐づいた人事戦略や人事制度が求められる。
  • 策定後、戦略的に人材開発への投資を行い、従業員のモチベーションアップにつながる、一人ひとりの能力を引き出す取り組みを実行する。

人的資本の価値を高める

  • 企業として重視する人材像を踏まえた人的資本を高めるための仕組みを構築し、その上で働きかけを行う必要がある
  • 現代のビジネス環境や働く人の価値観を踏まえた上で、自社の経営目的を達成するために欠かせない人的資本は何であるかを特定する。

情報開示

  • 企業の人的資本の情報開示の要請や開示指針査定の動きが進んでいる。日本では、2021年6月東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードを公表。
  • 具体的に、「人権の尊重」「従業員の健康・労働環境への配慮」「公正・適切な処遇」などが該当します。
  • 開示を行うことで、ステークホルダーの信頼を高めることにも繋がります。

人的資本に関する情報開示プロセス

情報開示プロセスの実施は以下のようなステップで実施します。

STEP1 開示情報の特定

情報開示などの取り組みにおいて、同業他社や世の中に単純にならうだけでなく、当社としての目的を明確にする必要があります。

STEP2 開示プロセス運用の設計

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人的資本に関する情報開示・ISO認証の企業経営への活用

人的資本情報の開示の指標化とISOとの関係

2018年国際標準化機構(ISO)が人的資本の情報開示に特化した初の国際規格「ISO 30414」を発表しました。
「ヒューマンリソースマネジメント-内部及び外部人的資本報告の指針」
組織文化、採用と離職、生産性、健康と安全、リーダーシップなど、主要なHR分野のガイドラインになります。

ISO30414 | 社内で議論すべき・社外へ公開すべき指標ガイドライン

ESG/SDGsなど社会議題のための「人的資本経営=KPIによるモニタリング&コントロールを定量化」、中長期での指標間の繋がりと因果関係の整理・活用が求められます。

⼈的資本の領域と基準は以下8項目にまとめられます。

人的資本情報活用の方向性と指標例

開示情報の考え方は、情報でどこに訴求していくかでその範囲や情報がことなってきますが、ISOを取得するのであればISOに従っていくことになります。

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人材マネジメント・HRテクノロジーで
人的資本情報の活用

人材マネジメント

人的資本情報を人材マネジメント改革に活用して企業経営に活かすことを優先すべきと考えます。

HRテクノロジーの活用

HRテックツールの普及が進んでいる中で、情報開示の前提として最大限有効に利用することが肝要になります。

人的資本経営に役立つTips

人的資本経営に関するお役立ち資料

人的資本経営についてまとめたお役立ち資料、無料でダウンロードいただけます。

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人的資本情報の開示に向けた 人事データ活用の方向性とステップ

人的資本情報の開示を義務化する動きが進む中で、どれだけの人事データを管理できていますか?また、「人的資本情報の可視化」における重要な目的を正しく捉えらてい...

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人的資本経営Q&A

Q1. 人的資本経営の定義は?

人的資本経営とは、企業が、人材を「価値を創出する『資産』」として捉え、人材が持続的に価値を創造する状況をつくり、中長期的に企業価値向上を図る経営の在り方です。

Q2. 人的資本経営の目的は?

労働人口の減少により「枯渇」が危惧される「資産」となった「人材」を「人財」と位置づけ、活躍できる環境(価値創基盤)をつくることでひとり一人がこれまで生み出していた以上の価値を創造する状況をつくり、企業価値の向上、ひいては社会的価値の総量の拡大を実現することです。

Q3. 人的資本情報の開示におけるメリットは?

一義的にはステークホルダーに対し人的領域に関する経営状況の情報提供により、自社の経営が適切に行われているといった説明責任を果たすことです。
その結果、企業への期待値の向上(投資対象としての価値創造、資金調達コストの低減)や、ブランド価値の向上(購買行動への動機づけ)などにより企業の成長の後押しとなります。
加えて、社会的に貴重な人的資源に対しての指標や姿勢を常に客観的に検証し、改善に取り組むなどし、自社の経営の高度化を図るためにも有効になります。

Q4. 人的資本情報の開示における注意点は?

開示のスピードや開示範囲の拡大に目が行きがちになる点です。もちろん開示情報の速さや範囲の拡大は姿勢として評価されるべき事項ですが、情報の正確性や意味のある情報であるかといった「情報の質」も重要になってきます。
また、開示される情報がどのような解釈をされるのかといった「リスク」にも目を向ける必要があります(同業よりスコアが劣ることによる企業価値の毀損など)。 特に、特別な理由などがあるものは、表面的な数字(スコア)だけで比較されないような工夫や意味の提示も必用になります。

Q5. 人的資本開示の義務化はいつから?

時期:2023年3月期決算以降の有価証券報告書から開示義務化(金融庁)
対象:有価証券報告書開示義務企業約4,000社
(注:2022年11月28日現在の情報より)